古書店主に聞く

古本屋さんの一日を大まかに教えてください。

朝、まずメールをチェックして、ネットでの注文を確認します。それを倉庫に取りに行き、梱包作業に入ります。それと並行して開店の準備をします。運送屋さんに集荷に来てもらって発送完了。その後は店番をしながら、前日までに仕入れた本の整理ですね。値段を付けてネット販売のためにデータ入力したり棚に並べたり。本の持ち込みのお客さんがあれば買い取り、そうしているうちに閉店、という感じです。

いつもではないですが、催事(スーパーの催事場などでの期間限定の販売)が間近であればその準備などの作業もあります。何でも自分でやらなきゃならないですね。

お店の品揃えはどんな感じですか?

まず郷土関係のものです。歴史好きのお客さんもいますから。それから美術系。文庫などお客さんが気軽に手にとって買いやすいものも置いています。観光客の方もよく来店されます。

3日と空けずに来店されるお客さん、催事や他店でもしょちゅう見かけるお客さんなど、古本好きなんだろうなと思わされる方もありますね。

話していて楽しいお客さんはありがたいです。知識が豊富なお客さんには教えられることがあります(ただ、見下すように言われるのはちょっと……)。

“催事”って何ですか?

店舗以外の場所で臨時に販売することがあります。“即売”と呼ぶこともあります。たとえばスーパーや新刊書店の一角(「催事コーナー」)で、5日間とか2週間とかの期間限定で「大古本市」などと称した販売機会ですね。

その他にも、商店街の催しや、駅などの一角を使って複数の古書店自体が主催して行うこともあります。

なるほど。大変そうですね。

大量の本を運んでいって、また持ち帰らなきゃなりません。全部売れることはありませんからね。期間中、棚が空いたら補充もしますから結局持ち帰る量も初めとあまり変わらないんですよ。

それでも催事に参加するのはどうしてでしょう?

各古書店にそれぞれの理由はあると思いますが、私はやっぱり店舗とは違う「出会い」に魅力を感じています。店とはまた違うお客さんの顔を見ることができること、会話できることが催事だと思っています。そこでの出会いをきっかけにしてお店に来ていただくようになることもありますしね。

お客さんの方から見れば、何しろ本と出会うきっかけとなるでしょうし、そうして思いもしなかった本とつながってほしいですね。

店頭、ネット、催事での人気の違いというのはありますか?

店頭では見て手に取りたくなるもの・手に取りやすいもの、ネットでは専門書がそれぞれ強くなりますね。催事では文庫などお手頃な価格のものも並べています。

店頭での買い取りはどのように行われるんですか?

お客さんが持ち込まれます。数冊の場合もあれば、段ボール数十箱の場合もあります。基本はその場で査定して買い取るのですが、大量の場合などはいったんお預かりして、後で査定額を連絡するという形になることもあります。

出張買い取りもやっていますか?

はい。いいこと楽しいこともたくさんありますが、ここでは大変だった例だけいくつかお話しましょう。

大学の先生の退官の際に研究室に行ったときは大変でした。まず量が多いし、片付いていない(売りたいものと残したいものが分けられていない)のです。前もって整理しておいてほしいと強く言いたいです。

また、買い取った後になって「あの本なかったですか?」と言われることがときどきあります。けっこう困ります。残念ながらまず見つかりません。

それから、よかれと思ってでしょうが、引っ越し用の段ボールにあらかじめ詰めていただいていたことがありました。本は重いんですよ。引っ越し用の段ボールは本には大きすぎます。腰を痛めそうでした。

愚痴ばっかりになってきましたね。

やっぱり古本がお好きなんですか?

はい。好きですね。

本好きには、「読みたい人」と「所有したい人」の2種類があるんじゃないかと思うんですが、私はどちらかというと後者でしたね。古本屋になる以前からたくさんの本を集めました。でも実はそう何度も繰り返しは読めないんですよね。そしてある時、一旦手放してもそれこそ古本として探せばまた入手できる(よほどの稀覯本でなければ)ということに気づきました。

そこで思い切って自分の本を手放す代わりに古本屋になりました。それからは多くの本が私の手を経由していろいろなお客さんからお客さんに渡っているという訳です。

新刊と違うのは、古本屋の本はすべて店主の所有物だということです。ぜんぶ自分の好きにしていい。どんな値段を付けるのも店主の自由だし、売る売らないを決めるのも店主の自由です。

目の前の作業に追われて日々が過ぎていき、いったい何が楽しんだろうなあ、とふと思うこともありますが、やめるつもりはありません。ずっと続けていきたいと思っています。

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